LIFE

弟子屈の冬を
生き延びる方法

最低気温マイナス25℃。これは数字ではなく、体験だ。

東京から弟子屈に来て最初に驚くのは、寒さの「種類」が違うことだ。東京の冬は湿った寒さで、体の外側から冷やされる感覚がある。弟子屈の冬は乾いていて、体の内側から温度が奪われる感覚がある。呼吸のたびに鼻の中が凍りそうになる。朝、扉を開けると、吐く息が即座に白くなって、すぐ消える。水分がない。空気に水分がない。

SOLUNAの施設でひと冬を過ごして、学んだことがある。弟子屈の冬は、「生き延びる」という言葉が似合う環境だ。でも生き延びた先に、何かが残る。その何かを、言葉にしたくてこれを書いている。

薪ストーブという哲学

TAPKOPのメイン暖房は薪ストーブだ。電気ヒーターではない。薪を割って、くべて、空気量を調整して、火を維持する——これは仕事だが、瞑想に近い。焚き付けの小枝が燃えて、太い薪に火が移るまでの20分間、人はストーブの前に座っている。スマートフォンを持っていない。ただ、火を見ている。

薪は事前に割っておく必要がある。秋に割った薪を乾燥させて、冬に使う。弟子屈では薪は地元の林業者から購入できるが、割るのは自分の仕事だ。斧を持って薪割り台の前に立ち、40〜50センチの丸太を縦に割る作業は、30分で汗だくになる。マイナス10℃でも、薪を割っていると体が熱くなる。北海道の冬に汗をかく、という体験が、ここにある。

薪を割ることは、冬に汗をかく方法だ。マイナス10℃で体が熱くなる感覚を、都市では知らなかった。

薪ストーブの熱は、電気ヒーターの熱と質が違う。遠赤外線が多く、体の芯から温まる感覚がある。ストーブの上で鍋が煮える。ぬれた手袋を横に置くと乾く。部屋の空気が乾燥するので、水を張った鍋を置いて加湿する。これらの小さい行為が積み重なって、冬の生活リズムが生まれる。

凍結という問題

弟子屈の建物で最初に直面する技術的な問題は、水道凍結だ。気温がマイナス15℃を下回ると、水道管が凍る。凍ったら水が出ない。最悪の場合、管が破裂する。

対策は二つある。一つは、就寝前に水道をわずかに流しておくこと。流れている水は凍りにくい。もう一つは、水道管に電熱線(凍結防止ヒーター)を巻いておくこと。SOLUNAの施設では後者を採用しているが、電熱線は電力を消費する。オフグリッドを目指す場合、この電力をどこから調達するかが問題になる。

車のエンジンも凍る。マイナス20℃を下回った朝は、エンジンがかかりにくい。バッテリーが弱っていると確実にかからない。弟子屈でよく見かけるのは、エンジンスターターとブロックヒーターを常備している車だ。ブロックヒーターはエンジンブロックを電熱で温めておく装置で、就寝前にコンセントに差しておくと、翌朝すぐにエンジンがかかる。

マイナス25℃の朝、何が起きるか

マイナス25℃の朝は、TAPKOPの窓が結露で凍っている。内側から触ると、ガラスが冷たくて、指先がすぐに痛くなる。外に出ると、雪が「キュッキュッ」と鳴る。乾雪は温度が低いほど音が高くなる。マイナス10℃の雪は「ザクザク」で、マイナス25℃の雪は「キュッキュッ」だ。この音の違いが、気温計よりも正確な温度計になる。

天の川が見える日は、最も気温が下がる。雲がないと放射冷却が進んで、地面の熱が宇宙に逃げていく。弟子屈で一番星が綺麗な夜が、一番寒い夜でもある。星と寒さがセットで来る。

天の川が見える日は、最も気温が下がる。星の美しさと寒さはセットで来る。これが北海道の論理だ。

寒さに慣れると、感覚が研ぎ澄まされる感覚がある。東京にいると気づかない、空気の匂い、光の色、雪の音——これらが全部、くっきりと聞こえてくる。都市のノイズが消えると、感覚のダイナミックレンジが広がる。これが「北海道に来る理由」の本質だと、冬を越してわかった。

天然温泉という解法

弟子屈の冬の本当の解法は、天然温泉だ。TAPKOPはNES(ネイチャーエクスペリエンス弟子屈)の温泉を引湯できる立地にある。マイナス25℃の外気の中に、42℃の温泉がある。その差67℃。

外気浴の感覚が、東京のサウナとまったく違う。東京の外気浴は「涼しい」程度だが、弟子屈の外気浴は「自分の体から湯気が立つ」体験だ。温泉から上がって外に出ると、皮膚の表面に付いた水分が即座に蒸発する。その気化熱で、逆に体が冷える。だから長く外にいられる。水風呂よりも強烈に、体が冷える。

弟子屈の冬は、この「温泉 → 外気浴 → 温泉」のサイクルで生き延びている。建物の中で薪ストーブをたき、外では星空を見ながら湯気を出す。これが北海道の冬の正しい過ごし方だと、ひと冬かけて体が覚えた。

天の川と温泉

弟子屈の夜空と温泉。星が見える夜が、最も寒い夜だ。

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北海道弟子屈の冬と夏を、自分の場所として持つ。天然温泉と薪ストーブのある9,000坪。

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濱田 優貴
Enabler Inc. CEO / DJ / 柔術茶帯
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