みんなで建てる、という体験がある。
2025年の秋、弟子屈のTAPKOP敷地に10人を連れていった。建築家、エンジニア、デザイナー、投資家、料理人——普段は別々の文脈で仕事をしている人たちだ。3日間、同じ敷地に住んで、同じものを建てた。これをWork Partyと呼んでいる。
Work Partyはただの作業じゃない。「作ることで、人が変わる」という仮説の実験だ。会議室で話し合っても分からないことが、現場で手を動かすと分かる。土地の傾き、風の向き、朝と夕方の光の違い——これらは図面には載っていない情報だ。
1日目: 解体と観察
1日目は解体から始まった。敷地に先行して搬入されていた20フィートコンテナを、改造するための前準備だ。コンテナの鉄板に丸鋸で窓開口を開ける。切り口は鋭い。グラインダーで面取りする。鉄粉が飛ぶ。保護眼鏡が必須だ。
VUILDのスタッフがCNCルーターで事前に削り出してきた木製パーツが、数十個ある。ダボとほぞで組み合わさる構造で、釘を使わない。VUILDのパーツは「説明書がなくても、形が正解を教える」設計になっていた。凸と凹の形が合えば、正しく組み合わさっている。間違いようがない。
夜は焚き火を囲んで食事した。地元の農家から仕入れた野菜と、釧路の海産物。調理担当は参加者の中で料理人だった人だ。「仕事」と「パーティー」の境界線が、最初の夜に崩れた。
2日目: 構造を立ち上げる
2日目は構造だ。コンテナの内側にCNC製の木フレームを組んでいく。断熱材を壁面に充填する。弟子屈の冬はマイナス25℃なので、断熱は妥協できない。高性能グラスウール(熱伝導率0.036 W/m·K)を195mm充填し、内側には気密テープで連続気密層を作る。
気密施工は地味だが、最も重要な工程だ。気密層に穴が開くと、冬に結露が発生して断熱材が濡れ、性能が著しく落ちる。テープの端を丁寧に押さえながら、シワを作らないように貼る。「この作業が一番地味で、一番大事だ」とVUILDの人が言っていた。建築のリアルがそこにあった。
午後から屋根の作業に入った。コンテナの上に木製デッキを架ける。2×8材で根太を組んで、その上に厚さ38mmの杉板を張る。杉は柔らかくて加工しやすく、北海道の湿気と乾燥の繰り返しにも比較的強い。板と板の間に3mm程度の隙間を取るのは、膨張・収縮のための余裕だ。これも「図面には書けない感覚」だと、現場で教わった。
3日目: 仕上げとシステム
3日目は仕上げとシステムだ。内装の壁板を張り、電気配線を通し、WiFiルーターを設置し、KoeのCOINユニットを壁に取り付けた。
自分が担当したのは電気と通信だ。200Wのソーラーパネルを屋根に設置して、30Ahのリチウムバッテリーに蓄電する。Koeの各ユニットは消費電力が5W以下なので、4台程度であればバッテリーだけで夜間も動作する。ESP32-S3のファームウェアを現地でOTA(Over The Air)アップデートして、全台の同期を確認した。
3日目の夜、初めてKoeを4台同期させて音を出した。まだ4台だけだが、空間の中に音が満ちた感覚があった。コーチェラの砂漠で感じた「音に包まれる」体験を、自分で設計した空間で再現する——その第一歩が、弟子屈の小さなコンテナハウスで起きた。
Work Partyが残すもの
Work Partyが終わった後、参加者から共通した感想が来た。「普段の仕事と全然違う疲れ方をした」「3日間でこんなに仲良くなれると思わなかった」「建てたものを自分の場所だと思えた」。
最後の感想が一番重要だ。SOLUNAは不動産として所有権を売るが、本当に売りたいのは「この場所は自分が作った」という感覚だ。共同所有者として名前が登記に載るだけでなく、実際に手を動かした記憶が残ることで、場所との関係が変わる。
Work Partyは今後も定期的に開催する。新しい物件の建設フェーズごとに、共同オーナー候補を招待して一緒に建てる。建てる人が増えるほど、場所は豊かになる。SOLUNAのコアは、この「一緒に作る」という構造にある。
3日間でコンテナが家になった。厳密にはまだ途中で、内装の半分と設備工事が残っている。でも、4台のKoeが鳴った夜に、それがどんな場所になるかが見えた。